今回紹介するのはフジノン.言うまでもなくフィルムメーカーであるフジフィルムのレンズである.ただし,現行品ではなくかなり昔のもの.マウントはM42スクリューマウントと言って,1950~70年代にかけてドイツや日本の一眼レフに共通に採用されていたマウントで,中古市場には膨大な量のレンズが流通している.半回転させてロックする現在のバヨネット式と違って,単にネジの溝が切ってあり回転させてねじこんでカメラに装着する.フジが「FUJICA」という名のM42スクリューマウントの一眼レフカメラを作っていたのは1970年代.今回紹介する2本はそのFUJICA用のレンズである(がM42マウントなので他のカメラにも使える).
EBC FUJINON 55mm F1.8.本当に標準の標準レンズ.中古カメラ店やオークションで3000円もあれば買える.だが,このレンズがものすごくよく写るのである.Zeiss とはまた違った独特の鮮やかな色再現と,まろやかなボケ味が特に素晴らしい.初めてこれで撮ったポジがあがってきたときには驚いた.鏡筒も金属性で,操作感も滑らかで上々.小型計量なので取り回しもよい.ちなみに「EBC」とは「Electron Beam Coating」の略で,フジ独自のレンズコーティングの手法である.近年のレンズではさらに進化して,「Super EBC」になっている.
EBC FUJINON MACRO 55mm F3.5.これはその名の通りマクロレンズ.無限遠の撮影から倍率1:2までの接写ができるが,おそらく1:5~1:10くらいの倍率で最良の像が得られるように設計されている.鮮やかな色再現は55mm F1.8と共通しているが,これで撮った写真はF1.8とは対照的にカリっとシャープである.ヘリコイドには白と緑の距離表示に加えて,黄色で倍率も表示されているところがマクロレンズっぽさを醸し出していてよい.標準レンズとしても十分に通用するし,専用の接写リングを使えば等倍までの接写も可能である.
以前は28mmや100mmなど他のフジノンレンズも持っていたが,ローライフレックスの購入資金に回すために処分してしまった.が,これらのレンズを使ってみて,フジのレンズに対する認識が変わった.もちろんデジカメでは定評のあるメーカーだし,テレビカメラなどプロ用機器でも大手であるが,それらに比べてマイナーな印象が否めないフィルムカメラにおいてもフジはすごいのである.現在でも,35mmフルパノラマカメラのTX-2などマニアックな,しかし抜群に写りのよいカメラ(とレンズ)を提供してくれている稀有なメーカーである.
2 件のコメント:
フジノンというと、最近は医療用の機材などでよく名前を見かけます.放送用機材は、やっぱりキャノンが強くて、その次に見かけるのがフジノン、という印象です.
TX-2、面白そうですよね.ただ、フルパノラマとなると画角の決め方が非常に難しそう.放送用の映像の画角が、今まさに4:3から16:9に変更になりつつある過渡期なんですが、カメラマンたちはいつも頭を抱えております.余計なものまで写っちゃうんだ、これが.
そうですか.放送機器は(も?)キャノンですか.
ときどき,被写体を前にして「パノラマだったら」と思うことがあるので,TX-2はなかなか欲しいんですが・・・一般にフォーマットが変わるとなかなか大変です.写真ならば自分のイメージに沿って選べるわけだけど,放送用となると強制的にそうなるわけで,やっぱり慣れが必要でしょうね.
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